【第9回】NPO法人健康・生きがい就労ラボ

エイジフレンドリーシティ宝塚推進ため立ち上がった、宝塚市お互いさまのまちづくり縁卓会議の取り組みから生まれた「健康・生きがい就労」の活動ですが、同会議のメンバーが2021年4月1日にNPO法人を創設され、「NPO法人 健康・生きがい就労ラボ」として活動を展開しています。

定員を超えるほど応募が集まり、他市からも注目を集めている「健康・生きがい就労」ですが、その具体的な取り組みや想いについて、理事長の遠座さんと、広報担当の井川さんにZOOMオンラインインタビューでお話を伺いました。

健康・生きがい就労とは?

桝井:健康・生きがい就労とは、どんなものですか?

遠座:健康・生きがい就労というのは、①プチタイム(短時間)で、②80歳ぐらいの方でもできる仕事を、③3ヶ月程度のお試しで、少しのお小遣いをいただいて行う”プチ就労”をリタイア後の高齢者などが気軽に行えるようにする仕組みです。

「生活の為ではなく、健康のために活動する」ということを大切に、”活動しているから元気”ということを認識した上で働いていただき、それが大きな社会課題への貢献につながっていくことを感じていただきたいと考えています。

桝井:大きな社会課題への貢献というと、例えばどんなものでしょうか?

遠座:宝塚市も含め、全国的に少子高齢化などにより、介護費などの民生費が増えていきます。活動をして元気になり、要介護になる人が減れば、年200万円ほど掛かっている介護保険財政に貢献することができるといわれています。

また、この取り組みは自治体と協働して行いますが、雇用は事業者が行うため、自治体は金銭的な負担なくできる事業となっているところもポイントです。

桝井:まさに、ありそうでなかった仕組みなんですね。

四方よしのまちづくり展開へ

桝井:この取り組みのいいところはどんなところですか?

遠座:高齢者が活躍すると、高齢者本人だけでなく、その家族、事業者、公共の”四方”よしとなるところですね。

桝井:今、どの程度の事業所や人が関わっているのですか?

遠座:いまは、介護事業所や保育所など、6事業所が実際に動いています。

保育所ではお掃除やこどもの見守りや、介護事業所だと食事や入浴の準備や後片付けなど資格がなくてもできる作業などで働いてもらっています。

これは、資格がなくてもできる作業で負担が大きくなっている介護士や保育士などの負担軽減にもなっています。

桝井:事業者の人手不足を解消できたり、高齢者の活躍の場をつくることができることで、まちにとっても、家族にとっても、本人にとっても、まさに”四方”よしですね!

桝井:他市でも行われていますか?

遠座:現在大阪府摂津市で取り組み始めています。また、大阪の大東市からもお声がけをいただき、試験的に始めてみようとなっています。

ZOOMインタビューの様子

自分が高齢になっても元気で活動していられるために

桝井:遠座さんは、なぜ健康・生きがい就労をやってみようと思ったのですか?

遠座:自分ごとなんです。自分が80ぐらいになっても、健康を維持しながらやりたいことや役に立つことができたらいいなと思っていて、それなら今のうちにそういう仕組みを作ってしまおうと。

桝井:自分ごとで始められたというのは、みなさん共感されるかと思います。

遠座:参加者へアンケートを取ると、生活リズムができたとか、すこしお小遣いが入るのも嬉しい、誰とも関わらない日々をなんとかしないといけないと思った、現役時代とは違う”働く楽しさ”に気づけた、などの声をいただいています。

桝井:こういう声はとても嬉しいですね。

遠座:高齢者目線や生活者目線で活動しているのが、よかったのかと思います。

これは知見からの考察ですが、リタイア後の人たちは自分で自己効力感や自己肯定感を認めづらくなるのではないかと思うのです。そういう方は社会的な役割や、自己の存在を認められるものを、求めているのではないかと。

だから実際に活動することで、生きていることの確認ができるということに気付き、結果的に生きるエネルギーや喜びを得ることができているのではないかと思います。

桝井:「社会的な役割や、自己の存在を認められるものを求めている」というのは、子育て世代にも、共通することではないかと思います。

遠座:そうですよね。だからこれは雇用政策でもなく、福祉の政策なんです。

桝井:うまく多世代に広がるといいですよね。
次に、広報担当の井川さんにお聞きします。なぜこの活動に取り組まれているのか教えてください。

井川:元々、ジェロントロジー(老年学)を勉強していて、徳島県の”葉っぱビジネス”を知って、高齢者が能動的に就労を通して活動することで、介護保険の利用が減ったり、働くことで本人も社会も元気になっているということに興味を持ちました。

桝井:葉っぱビジネス、有名ですよね。

井川:シニアになると、まだ働いてるの?と言われることもありますが、リタイア前とは違い、これからは自分や家族のため、だけでなく、社会や周りの人のために、働きたいと思ったんです。そんな時に遠座さんとこの取り組みに出会い、参加することにしました。

普段はあまり口にしませんが、このNPOに関わることができて本当に感謝しているんですよ。

桝井:井川さんのような自分ごとからの働きかけや言葉がけはとても共感されると思いますし、説得力がありますよね。

部会からNPOへ

スマホ講座のようす

桝井:健康・生きがい就労は、はじめは「宝塚市お互いさまのまちづくり縁卓会議」の部会でしたが、NPO法人化したきっかけはなんだったのですか?

遠座:2020年に、「第9回健康寿命をのばそう!アワード」で厚生労働省老健局長優良賞自治体部門を受賞し、その時に全国的に広げるべきモデルと評価を受け、広げるためにはどうすればいいか考えた結果がNPO法人化でした。

桝井:表彰されている様子を写真で拝見しました。同じ縁卓会議のメンバーとしてもとても誇らしい気持ちでした。

桝井:NPO法人になってから、どのように活動を広げられているのですか?

遠座:これまで行ってきた健康・生きがい就労をさらに加速させ、広げていくべく推進や開拓を進めています。

介護サポーターや保育サポーターなどに加え、デジタル化に伴ったデジタル格差の課題解決のための、ICTサポーターやスマホ講座なども行っています。

また、学校現場のサポートをする学校教育サポーターの取り組みも始めています。

桝井:ICTサポーターやスマホ講座もとても人気と聞きました。

遠座:これまでは若年・現役層が高齢者を支えていた時代でしたが、少子化やデジタル化などで大変なこの時代、これからはシニア層が社会を支えていかなければいけないのは明らかです。

スマホ講座やICTサポーターはこれからの時代や社会の急激な変化を怖がらず、自らの活躍の場の幅を広げられるものになると思います。

桝井:シニアのみなさんがデジタル技術を使いこなし、活躍できる場が増えることで、まちも活性化しますよね。

今後の展望

桝井:これから目指すところや、みなさんに伝えたいことなどはありますか?

井川:シニアにとっては日々アップデートしていかないと、ついていけなくなってしまう激動の時代ですが、自分らしく、かっこよく、どんとこい!と構えられるよう、急激に変わっていく社会、生活スタイルを怖がらず、Withコロナの時代を悲観せず、一緒に楽しみながら、みんなで”スマートシニア”として活躍していきたいです。

桝井:働き方+自分のくらしもアップデートする、ということですね。これまでは、やりたくてもどうすればいいかわからない、誰に聞けばいいかわからない人も多かったと思います。

井川:そうなんです。それをNPOがサポートしていけるようになれたらと思います。

桝井:「働く」ということが、いかに日々の暮らしの活力となり、自己肯定感を高め、地域でいつまでも元気で暮らしたいという願いを叶えることにつながるかということが、今回お話をお聞きしてよくわかりました。

少子高齢化に財政難という深刻な課題を、”元気で、健康で、楽しく、どんとこい!”というポジティブな姿勢で、当事者として取り組むお二人を見ていると、今後どうなっていくんだろう?という漠然とした不安にも、一筋の光が差すような期待やワクワクを感じることができました。

得意なことを生かしたり、好きなことを元気に続けることができるようになる人が増え、つながりをつくりながら、たくさんのシニアが活躍できるよう、私たちも応援していきたいと思います。

団体名NPO法人健康・生きがい就労ラボ
代表遠座俊明
ホームページhttps://lifespiceworks.com
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