宝塚地域包括ケアシステム研究会~3つの若葉を育てる会~は、宝塚市の医療、介護、福祉に係る専門職・関係者が集まる場であり、創設から間もなく丸5年が経過する。この5年間の中で、多職種で「人工呼吸器」や「看取り」など、一つのテーマについて意見交換を行う毎月1回の研修会(毎回70名程度参加)を活動の中心として、必要に合わせて分科会が派生し、講演会の企画、市民に啓蒙するための寸劇の企画・実演を行っている。
今回は、発起人・世話人である馬淵英一郎さん(宝塚市立病院)、代表世話人の山内知樹さん(みつばウェルビーイング株式会社)に話を聞いた。具体的な活動内容はホームページ(http://wakabanokai.com/)を参考にしていただくこととし、今回は、どのような思いで会を運営しているのか、を中心にお話をうかがった。以下、同会を「わかば」と記させていただく。
「他人事(たにんごと)」ではなく「自分事(じぶんごと)」
まず、会の発足の経緯をうかがった。専門職の集まりであることから、その責任感ゆえの発足であると思われたが、意外にも、一市民としての危機感からであることが分かった。
誰もがみな高齢者になる。介護が必要になるかもしれない。そして現実的に、2040年には、1.5人の現役世代が1人の高齢者を支えることになると言われており、現状の保険システムをはじめとした政策が立ち行かなくなると懸念されている。そんな状況を、誰かがなんとかしてくれるのだろうか。なんの保証もないのである。そんな時代を、わが街宝塚市で、安心して迎えられるのだろうか。この問題は、誰にとっても「他人事」ではない。また、この問題においては、職種も関係ないのである。「わかば」は、医療・介護・福祉の専門職の集まりではあるが、専門職を持つ者である以前に一人の宝塚市民なのである。つまり、問題意識を持った一市民として、当事者として、という意識をもとに、専門職として「何か」しなければならない。「誰か」がやらなければならないことであり、「誰か」とは「自分」でなければならない。これが、まず声を上げた馬淵さんの原動力であり、それに共感した他の創立メンバーに共通した思いであり、5年にわたる会の参加者の動機となっているようである。
自らが暮らすまちの課題を、「自分事」として考え行動に移す。それは自分のため、であるかもしれないが、同じまちに暮らす「誰かのため」になることであり、それはまさに、エイジフレンドリーシティ宝塚が目指す「お互いさま」の活動である。

「気づいたら5年経っていた」
なぜこれまで存続してきたと思うか、という問いに対する答えがこれだった。もはや、納得の回答かもしれない。参加者皆にとって、必要性が感じられるから、なのだろう。いつもコンスタントに会が存在し、活動が行われている。そのため、毎回は参加できなくても、また、一度でも参加した者は、会がそこに存在していることを認識することができている。参加者がいて存在し続けることができるのだが、逆に、存在しているからいつでも参加できる安心感がある。それが、この会の存在意義の一つであるように思われる。
参加者が専門職としての課題に気づく、その「きっかけづくり」の場
会の、目的・目標は何か、という質問に対し、その回答には意外にも「間」が生じた。その後語られた回答は、「来る2040年に、暮らしていてよかったと思える宝塚市を目指す」というものだった。正直、一つの会の運営としては曖昧な回答という印象だった。しかしながら、その曖昧さでよいのだということが、今はもう理解ができる。この会は、「具体的な目的、目標に向かって計画的に活動している、というよりも、その時のニーズに合わせて必要だと感じられることをやってきた」という言葉からもわかるように、参加者自らが、参加を通じて課題意識を持ち、問題提起をし、それが会の新たな課題になる。そのようにして、存在、継続している会なのである。

市民も一緒に
この会は、始まりは、また現時点では、専門職の会、である。しかしながら、目指すところは、安心して暮らせるまちを目指すことであり、専門職が連携するという要素はその一部分でしかない。専門職としての活動に対象者である市民が加わることができて初めて、その活動が現実味を帯びることになる。会としても、専門職が連携するという第一段階があり、その後、その活動の意義が市民に現実的に生かされる、という段階に移っていく必要がある。「市民とどうつながっていくかが今後の課題」とのことであったが、それは、この会だけの課題ではないと考える。つまり、市民も、「わかば」が「何とかしてくれる」、と待つのではなく、「わかば」と「どうかかわっていけるのか」、「自分事」として考え行動に移す必要があるのではないだろうか。

宝塚市地域包括ケアシステム研究会 ~3つの若葉を育てる会~
設立:2015年2月
代表世話人:山内知樹
活動内容:地域包括ケアシステムを担う宝塚の医療・介護・福祉の関係者の連携推進
http://wakabanokai.com/
【レポーター】 西村 理恵
宝塚在住。鍼灸師(専門学校講師)。現役世代でフル勤務という限られた時間の中で、また、専門職を持つ立場として、「お互いさま」のまちづくりにどうかかわっていけるのかを模索中である。